キミの恋のはじまりは
空の眩しさが目にしみて、腕を額に当てて影を作った。
目の奥に閉じ込めた気持ちが、再度表に出てこないよう祈りながら深呼吸する。
ホームに電車が滑り込んでくると、勢いのある風が吹いてきて汗ばんだ身体に気持ちがいい。
そろそろ帰えらなくちゃ。
そう思うのに気持ちはやはり正直で、ベンチに縫い付けられたように動いてくれない。
帰りたくないなー。
でもなー。今日は……。
その時、後ろから覆いかぶさるように声が落ちてきて、暑苦しい太陽が遮られた。
日陰を作っていた私の腕がそっと掴まれて、一瞬呼吸が止まる。
「……なに、してんの?」
驚いて目を見開けば、視界に急に逆さまに現れた顔はよく知った幼馴染のそれで。
ダークブラウンの髪の隙間から太陽光が漏れて揺れ、同じような色の目は訝しげに細められている。
「……泉!」
うわっ、会いたくないやつに会ってしまった。
そう思ったのが素直に顔に出てしまったらしく、泉はまるで嫌いな虫でも見つけたかのような苦々しい顔をする。
「こんなとこで、なにしてんの?」
もう1度聞いて、私の腕を離し隣にドカっと座ってため息をつく。眉を不機嫌そうに寄せて私の方をチラッと見てたと思ったら、さらに盛大なため息をついてみせる。
不穏な空気出しまくりの泉を見たら、私の1人応援団を邪魔してくれた泉の罪を思い出しなんだか腹が立ってきた。
なんなの?!
なんか、よくわからないけど、私、ため息つかれるいわれなくない?!
どっちかっていうと、私の方が泉にため息つきたいんですけど!?
我慢大会頑張れなくした文句言いたい気分ですけど!?