キミの恋のはじまりは
もう次の言葉が見つからない。
どこかに落ちてないかな、私の気持ち。虚ろな想いで周囲を見渡すけれど、蒸せるような残暑の熱気と忙しない人の流れがあるだけだった。
だから、私は手を振り払うこともできず、ただ、じんじんとする指先を見つめるしかできないでいた。
少しすると小さなため息が落ちてきて、手はするりと解放された。
離れてしまった指先を見れば、なぜか心もとなくなるのは私のわがままだ。
「……落ちるといいな」
泉は私のブラウスの肩口に残っている緑色のシミを優しく擦る。
その時に、泉の手の甲が私の毛先に触れた。髪がさらりと背へ流れて、まるで意思あるもののように息吹くのを感じた。
うん、
帰ったら、お母さんに
しみ抜きしてもらおーかな、
そういつものように言えばいいのに、そんな簡単なことさえもう出てきてくれない。