キミの恋のはじまりは


◆ ◆ ◆


「もう無理~、つまんない~!」



真由ちゃんは持っていたカラーペンを放り投げて、苛立ちを発散させるように伸びをした。


「だよね~!」と同調する優香ちゃんと、「そうは言ってもやらないと終わらないから、手動かそ」と冷静な田場ちゃんが眼鏡をきらりと光らせる。


夏休みが終わって少したった9月中旬。私たちは文化祭の準備に忙しい……はずなのだけど、なかなかやる気を出すのは難しい。



「もうさ~、”世界の水事情”とかじゃなくてさ。カフェとかやりたかった~!」



視線を床に戻して、広げた真っ白な模造紙を憎らしげに見る真由ちゃんが言えば



「同じく!……どうしてウチの学校の文化祭って地味なの……」



大きなため息をつく優香ちゃん。



「まぁまぁ、とにかく進めようよ」



2人をなだめるように言ってカラーペンを差し出すと、しぶしぶそれを受け取ってくれるけれど、白紙の模造紙の圧にやられる私たち。

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