flying dolphin
鱓はそう言いながら彦名のもとへ今度は近づいて小声で、

(おい!彦名!湊組がこいつらのバックについてることは分かってんだよ。このまま 訳わからん事起こすんじゃねぇゾ!)

今は東堂もいねぇ訳だしなぁ。秦檜組(しんかいぐみ)とのことも まだ終わっちゃあいねェ!)

(なぁ!彦名ぁ。まだ叩けば埃もでるかもしれねぇしなァ!)(ぉお!?)

彦名は湧き出してくる怒りを抑えて鬼神の凍りついたような目つきで鱓を睨みつけた!

彦名(鱓さん。叩けるものなら叩いてみやがれ!!湊組を東堂をナメんじゃねえゾ!!)

鱓(フッ、 まあいい 。とにかく 騒ぎ起こすんじゃねぇゾ!)

そう言い残し鱓と部下は その場を去った。

その日病院を後にしたヒロと紬は無言でXJ400に乗り込み走り去って行った。

紬の心の中は複雑だった。
ヒロとアキラの優しさと 男らしさと 面白さと カッコよさと 楽しさと 涙した日と XJ400と 全ての思い出が本物なのに・・

今日、リアルに知った危険な香りのする世界も本物であったことが、知ってはいたけど・・・知ってはいたけど、いざ目の当たりにすると 心が何処か苦しくて。。苦しくて。。。

ヒロは背中にもたれ抱きついている紬の体温が いつもより感じれなくて それがなんとなく分かるようで・・・・。

それゆえ どうしようもなく不安な気持ちに包まれたままだった。

2人には不安な気持ちや苦しみなんて無縁なはずなのに この時ばかりは 笑うことが 限りなく遠くへと遠くへと去っていった。
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