夏幻
どうか。どうか、このドキドキが伝わりませんように……。


この想いがまだ、恋なのかよくわからないけど――気になってしまう、無意識にその姿を探して、求めてしまう。



「夏の花の、香りがする」

「……くすっぐったい、ですってば」


――くらくらする。彼の声は、すこしだけ色っぽい。


「あ」

「……?」


彼の声に反応し、その視線の先を追う。


よくよく見ると保健室の窓が少しだけ開いていて、そこには満開の夏椿。――そうだ。あの香りは、夏椿だったんだ。


儚げな白い幻想的な風景が広がる向こうに、想いを彷徨わせていたら。


「雪が降る。夏椿って、アンタに似てるな」




――私も同じ、だよ。



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