葦名絢芽は、初恋を諦めたい


今日は始業式ということもあり、学校は午前で終わった。

「またね」
「気をつけて帰るんだよっ」
「うん、二人ともばいばいっ」

亜実ちゃんとつばきちゃんに手を振った後、私は通学カバンとして使っているリュックを背負い、立ち上がる。

すごく緊張するけど、伊織くんのクラスへ向かう。

私だけ先に帰ると、伊織くんは困ってしまうから。

いざ、戦場へ!

私は両手のこぶしを作ってやる気を出すと、教室を後にした。


隣のクラスはあっという間に着いたけど、私はおろおろしながら立ち往生していた。

だって、伊織くん、大勢の女の子に囲まれているんだもん。

予想はしていたけど、他のクラスや学年の女の子も来るとは思わなかった。

当の伊織くんは始業式の自己紹介の時と同様に無表情だけど、女の子達は大して気にもとめず話しかけている。

その集団に乗り込む度胸を持ち合わせていなくて、私はおろおろと遠巻きに見ているしか出来なかった。

「葦名さん?」

どうやって声をかけようか迷っていると、突然、男の子が私の名前を呼んできた。
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