葦名絢芽は、初恋を諦めたい
苺ミルクキャンディ

一七○はありそうな男の子より更に高い背丈の伊織くん。

「あぁ、わ、悪い」

伊織くんの剣幕に圧倒された男の子は、すごすごと後ずさりし、教室から出て行ってしまった。

男の子がいなくなって、ほっ……と安心していると、私の頭の上に温かいものが触れた。

温かいものの正体は、伊織くんの手だった。

胸の鼓動は落ち着きそうにない。

「ありがとう……久しぶりだね」

顔を合わせるのは四年ぶりだというのに、伊織くんはすぐに私が絢芽だと気付いてくれた。

嬉しさと気恥しさでいっぱいだ。

「ああ。また、一緒に通えるな」

伊織くんは、ふ、と口角を上げ、表情を少し綻ばせた。

胸がぎゅうっと締め付けられて、苦しくなる。

伊織くん、その笑顔は反則だよ。

そう感じたのは私だけじゃないみたいで、周囲から黄色い悲鳴が響いた。

ぐるりと見渡せば、目に入ったほとんどの女の子が頬を赤く染めていた。

伊織くんの不意打ちの笑顔は、かなり破壊力があるみたい。

益々、好きになる女の子が増えるんだろうな。

< 14 / 23 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop