葦名絢芽は、初恋を諦めたい
苺ミルクキャンディ
一七○はありそうな男の子より更に高い背丈の伊織くん。
「あぁ、わ、悪い」
伊織くんの剣幕に圧倒された男の子は、すごすごと後ずさりし、教室から出て行ってしまった。
男の子がいなくなって、ほっ……と安心していると、私の頭の上に温かいものが触れた。
温かいものの正体は、伊織くんの手だった。
胸の鼓動は落ち着きそうにない。
「ありがとう……久しぶりだね」
顔を合わせるのは四年ぶりだというのに、伊織くんはすぐに私が絢芽だと気付いてくれた。
嬉しさと気恥しさでいっぱいだ。
「ああ。また、一緒に通えるな」
伊織くんは、ふ、と口角を上げ、表情を少し綻ばせた。
胸がぎゅうっと締め付けられて、苦しくなる。
伊織くん、その笑顔は反則だよ。
そう感じたのは私だけじゃないみたいで、周囲から黄色い悲鳴が響いた。
ぐるりと見渡せば、目に入ったほとんどの女の子が頬を赤く染めていた。
伊織くんの不意打ちの笑顔は、かなり破壊力があるみたい。
益々、好きになる女の子が増えるんだろうな。