葦名絢芽は、初恋を諦めたい
伊織くんのお部屋は私の隣だ。

元々、空室で使わない家電を置く物置部屋だったけど、それを避けて掃除をした。

「ここだよ」

中に入ると、ベッドとローテーブルのシンプルな内装が広がる。

この部屋はクローゼットが備え付けられているから、収納は沢山ある。

「ありがとう。絢芽はとなり?」
「そうだよ。手伝うことはある?」
「大丈夫。休んでて」
「うん、何かあったら遠慮なく呼んでね」

私は邪魔にならないように部屋を後にした。


自分の部屋に入って、ベッドのふちに腰かける。

隣に伊織くんがいる。

当分会えないと思っていたから、なんだが夢を見ているみたい。

あの頃と違ってクールで大人びていたけど、相変わらず優しかった。

一緒に暮らしていることは内緒にした方がいいかな……?

後で伊織くんに聞いてみよう。

そう考えごとをしながら、着替えをしようとベッドから立ち上がり、結ばれたネクタイを緩めた。


シンプルなワンピースに着替えると、ごろりとベッドに横たわる。

久しぶりの学校で思ったより疲れていたのか、いつの間にか横たわって意識を手放していた。
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