葦名絢芽は、初恋を諦めたい
コンビニで目当てのものを買った後は一緒に帰る。
帰り道も同じ学校の子に遭遇することなかった。

「ただいま」
「ただいま」

帰る場所が一緒だなんて、胸の奥がくすぐったい心地になる。

ちょっとした買い物だけど、私には刺激が強い。
部屋に入って漫画を読んで心を落ち着かせよう。と心に決めて部屋のドアを開けた瞬間。

「絢芽」と呼ぶ声が耳を突いた。

「なあに?」

声の主は紛れもなく伊織くんだった。

「これあげる」

伊織くんが私に渡したのは、とあるメーカーのロングセラー商品である苺ミルクキャンディーの袋だった。パッケージには〝10%増量!〟と書かれている。
この苺ミルクキャンディーは、飴の中で一番大好きだったりする。

「小さい時、よく食べてたよな」

覚えててくれたんだ。わざわざ買ってくれるなんて。
些細なことだけど、嬉しくなって胸の中がじわりと温かくなる。

「うん、今でも大好きだよ」
「うん、そっか」

伊織くんはなぜかそっぽ向いた。
子どもっぽいと呆れたのかもしれない。
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