葦名絢芽は、初恋を諦めたい
立花伊織は、お父さんのお姉さんの子ども……つまりはいとこに当たる。
一見女の子っぽい名前だけど、れっきとした男の子だ。
同い年ということもあり、幼なじみと言っても過言じゃないくらいよく遊んだりした。
同じ幼稚園、同じ小学校。いつも一緒にいた。
伊織くんは、小さい頃から優しくてかっこいいから女の子に人気だった。
私はそんな彼と親戚であることが自慢で誇らしかった。
大人になっても、仲良くいたいと思っていた。
そんな伊織くんは、中学に上がると同時に両親と一緒に海外に渡ってしまった。
お父さんのお仕事の都合だった。
いつも近くにいた伊織くんがいなくなって、私は初めて自覚した。
伊織くんを一人の男の子として好きなんだと。
でも、私は必死にその思いに蓋をした。
だって、私と伊織くんはいとこ同士、親戚だから。
日本の法律では、いとこ同士は結婚することが出来る。
だけど、血縁があるから、世間では嫌悪や偏見を持つ人が少なくはない。
伊織くんもそっち側だったら……。
私の気持ちを知ってしまったらと想像するだけで血の気が引いた。
私は自覚すると同時に、この気持ちをお墓に入るまでの秘密にしようと心に決めた。