葦名絢芽は、初恋を諦めたい

月日が流れて、四月六日。

私、葦名絢芽は高校二年生になりました。

今日は始業式であり、伊織くんがうちにやって来る日だ。

伊織くんは昨日日本に着いたばかりで、宿泊先から直接高校に向かうらしい。

登校途中、私は昔の伊織くんを思い浮かべていた。

ミルクティーブラウンの髪に、ヘーゼルのぱっちりとした目、お父さんがハーフだから少し日本人離れした綺麗な顔立ちをしていた。

あの頃は、後を着いていく私を嫌がらず、一緒に遊んでくれた。

今はどんな感じになっているんだろう。

見た目や性格は、あの頃と違うかもしれない。

どんな顔をすればいいのか正直分からない。

だけど、伊織くんと一緒に帰ってきなさいとお母さんに頼まれたから、避けるわけにはいかない。


考えごとに耽っている内に、いつの間にか学校に到着していた。

都立誠稜(せいりょう)高校。

都内では偏差値がトップクラスの公立高校で、私は猛勉強の末何とか合格することが出来た。

授業や課題のレベルは高いけど、自由な校風で人気の高校の一つに数えられている。

制服はシンプルな濃紺のブレザーで、男子はスラックス、女子はプリーツスカートという格好だ。
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