葦名絢芽は、初恋を諦めたい
クラス替えは、運良く一年の頃の友達と同じだった。ちなみに伊織くんはお隣のクラスだった。
二年の教室へ向かう途中、誠稜では少し派手な身なりの男女の会話が耳に入った。
「立花伊織って知ってるか? 見ない名前」
「もしかして、転入生? 春休み前先生が言ってたような……」
「性別どっち? オレ可愛い女子がいいなぁ!」
「いや、イケメンがいい! “ツートップ”並だといいなぁ」
もう話題に上がっている……!
ちなみに通りすがりの女子が言っていたツートップは、断トツで格好いい男子二人を指すけど、彼らは誠稜にいない。
男子校の葵葉高校と、共学の菖蒲高校にそれぞれいる三年生の男子らしい。
家柄が良く、成績優秀、見た目も極上、まさに完璧な御方だとまた聞きで知った。
葵葉の人は小さい頃から婚約者がいて、相思相愛らしいけど、それでも根強い人気を誇っている。
一方、菖蒲の人は婚約者も彼女もいないフリーで、校内外問わずハンターの如く彼女の座を狙う女子が大勢いるとか。