葦名絢芽は、初恋を諦めたい
「葦名さん、おはよー」
「絢芽ちゃん、一年間よろしくね」
何度経験しても、進級初日の教室は緊張してしまう。
でも、二人の男子生徒に笑顔で友好的に話しかけられて、内心ほっとした。
「お、おはようっ。こちらこそ、よろしくねっ」
緊張を覚えながらも感謝の気持ちで言葉を返す。
「葦名さんと同じクラスで嬉しいわ。なぁ」
「ほんと、それ」
嬉しいなんて、親切な人だなあ。
「あ、ありがとう」
幸先いいなーと思いながら黒板に貼られている座席表を見に行く。
名簿順で、“あしな”だから窓際から一列目はほぼ確定しちゃうけど。
案の定、一列目の前から二番目だった。ちなみに私の前は相庭さん。
「絢芽おはよう」
「絢芽ちゃん、おはよー!」
指定された席に座って、ぼんやりとしていると、聞き慣れた大好きな二人の声が聞こえてきた。
ショートボブの大人っぽい女の子と、お団子ヘアがトレードマークの活発な女の子が私の元へ駆け寄る。
「おはようっ、亜実ちゃん、つばきちゃん」
二人は高校一年の頃からの友達で、入学初日、引っ込み思案な私に話しかけてくれた。
頼れるお姉さんな亜実ちゃんと、周囲を明るくさせる朗らかなつばきちゃん。
友達になって一年が経ったけど、親友と言っても過言じゃないほど仲がいい。