純愛カタルシス💞純愛クライシス
「白鳥にとっては、それくらい楽しいコトになるでしょ? 白鳥アンタ、クソ真面目な童貞だから、余計なことを考えたのね?」
「アキラ、毒舌が過ぎるぞ。ただでさえ傷ついてる白鳥に、追い打ちかけてどうする」
「俺、わからなくなったんです。興奮しすぎて、頭が混乱してしまったっていうか」
副編集長と一ノ瀬が口論しかけたときに、白鳥がやっと理由を話した。お互い顔を見合わせてから、副編集長から話しかける。
「わからなくなったって、そうね。まずはアンタがそのとき、頭の中に浮かんだことを、すべて言ってみてちょうだい」
宥めるように、鳥の巣のようなボサボサの頭を撫でながら諭した、副編集長の視線から逃げる感じで、白鳥は俯きながら告げる。
「頭の中に浮かんできたこと。どうしたら美羽姉を感じさせることができるか。手を出す俺を見て、怖くなったりしないか。はじめてだから、手加減がわからない。下手って思われたら、嫌われるかもしれない。美羽姉を抱いてきたヤツらは、すごかったのかなとか。あとはTシャツを脱がすタイミングや、ブラジャーの外し方がわかないとか。それと――」
「まだあるのかよ……」
延々と続く白鳥のセリフを聞いていた、一ノ瀬の顔が歪む。副編集長は呆れた一之瀬を横目で見てから、大きなため息を吐いた。
「一ノ瀬、自分がはじめて女を抱いたときのことを、よぉく思い出してごらんなさい。白鳥が不安に思ったことで、当てはまるものがあったんじゃないの?」
「ない。自分が気持ちよくヤることだけしか、考えてなかった」
「まったく。童貞喪失が早い年齢だから、余計なことを考えないのよね。最低!」
舌打ち混じりに罵った副編集長に、一ノ瀬はおもしろくなさそうな顔で訊ねる。
「そういうアキラは、どうなんだよ?」
「当てはまりまくりよ。だって好きな女を抱くんだもの、緊張しないほうがおかしいわよ。ベッドに横たわる彼女より震えていたかも!」
「副編集長、俺も震えてました!」
涙目で左手をあげて声を出した白鳥に、一ノ瀬を見た副編集長は「ほら、ごらんなさい」と偉そうに胸を張って言いきった。
「なんで気持ちよくなる行為に、ふたりそろってビビって震えるんだ。意味がわからん」
「それはね、アンタが好きな女とヤってこなかったせいよ。だからその歳で結婚もせずに、ワンナイトラブばかりしてるんだから」
「俺としては結婚と離婚を二回ずつ繰り返してる、誰かさんみたいな奇特な男のほうが、人生を謳歌していると思うけど。子どもたちがお父さんの今の姿を見たら、絶対に嫌がること間違いなし!」
「成臣てめぇ、言っていいことと悪いことがあるだろぉがっ!」
「ふたりとも、もうやめてください! 俺のせいで、喧嘩してほしくないですって」
両腕で一ノ瀬の胸ぐらを掴んだ副編集長に、困った顔した白鳥が抱きつく。胸ぐらを掴まれた一ノ瀬は顔を横に背けながら、意地の悪い面持ちで舌を出していた。
「白鳥、俺らに気を遣う前に、自分の恋人に気を遣えよ」
オネエ言葉を使わずに喋りかけた副編集長に白鳥は驚き、抱きついた体からパッと離れた。
「彼女は、おまえが勃たなかった理由を考え抜いて、今頃自分を責めてる。それこそ年上だから、かわいげがなくて魅力がないとか、ほかにもいろいろ理由を悶々と考えて、さっきのおまえ以上に悩んでるはずだろうな」
「そんな……。美羽姉はなにも悪くないのに」
「好き合ってるから、相手に非があるとは互いに思わない。付き合いたての恋人って、特にそういうところがあるんだよ」
副編集長は一ノ瀬から両手を放したと思ったら、すぐ傍にあるオデコを苛立ちを込めて容赦なく叩いた。叩かれた一ノ瀬は「いでっ!」なんて変な声を出してリアクションする。
ピリピリする皮膚の痛みに顔を歪ませながら一ノ瀬が顔をあげると、室内に白鳥の姿はすでになく、扉が開け放たれたままだった。
「アキラ、毒舌が過ぎるぞ。ただでさえ傷ついてる白鳥に、追い打ちかけてどうする」
「俺、わからなくなったんです。興奮しすぎて、頭が混乱してしまったっていうか」
副編集長と一ノ瀬が口論しかけたときに、白鳥がやっと理由を話した。お互い顔を見合わせてから、副編集長から話しかける。
「わからなくなったって、そうね。まずはアンタがそのとき、頭の中に浮かんだことを、すべて言ってみてちょうだい」
宥めるように、鳥の巣のようなボサボサの頭を撫でながら諭した、副編集長の視線から逃げる感じで、白鳥は俯きながら告げる。
「頭の中に浮かんできたこと。どうしたら美羽姉を感じさせることができるか。手を出す俺を見て、怖くなったりしないか。はじめてだから、手加減がわからない。下手って思われたら、嫌われるかもしれない。美羽姉を抱いてきたヤツらは、すごかったのかなとか。あとはTシャツを脱がすタイミングや、ブラジャーの外し方がわかないとか。それと――」
「まだあるのかよ……」
延々と続く白鳥のセリフを聞いていた、一ノ瀬の顔が歪む。副編集長は呆れた一之瀬を横目で見てから、大きなため息を吐いた。
「一ノ瀬、自分がはじめて女を抱いたときのことを、よぉく思い出してごらんなさい。白鳥が不安に思ったことで、当てはまるものがあったんじゃないの?」
「ない。自分が気持ちよくヤることだけしか、考えてなかった」
「まったく。童貞喪失が早い年齢だから、余計なことを考えないのよね。最低!」
舌打ち混じりに罵った副編集長に、一ノ瀬はおもしろくなさそうな顔で訊ねる。
「そういうアキラは、どうなんだよ?」
「当てはまりまくりよ。だって好きな女を抱くんだもの、緊張しないほうがおかしいわよ。ベッドに横たわる彼女より震えていたかも!」
「副編集長、俺も震えてました!」
涙目で左手をあげて声を出した白鳥に、一ノ瀬を見た副編集長は「ほら、ごらんなさい」と偉そうに胸を張って言いきった。
「なんで気持ちよくなる行為に、ふたりそろってビビって震えるんだ。意味がわからん」
「それはね、アンタが好きな女とヤってこなかったせいよ。だからその歳で結婚もせずに、ワンナイトラブばかりしてるんだから」
「俺としては結婚と離婚を二回ずつ繰り返してる、誰かさんみたいな奇特な男のほうが、人生を謳歌していると思うけど。子どもたちがお父さんの今の姿を見たら、絶対に嫌がること間違いなし!」
「成臣てめぇ、言っていいことと悪いことがあるだろぉがっ!」
「ふたりとも、もうやめてください! 俺のせいで、喧嘩してほしくないですって」
両腕で一ノ瀬の胸ぐらを掴んだ副編集長に、困った顔した白鳥が抱きつく。胸ぐらを掴まれた一ノ瀬は顔を横に背けながら、意地の悪い面持ちで舌を出していた。
「白鳥、俺らに気を遣う前に、自分の恋人に気を遣えよ」
オネエ言葉を使わずに喋りかけた副編集長に白鳥は驚き、抱きついた体からパッと離れた。
「彼女は、おまえが勃たなかった理由を考え抜いて、今頃自分を責めてる。それこそ年上だから、かわいげがなくて魅力がないとか、ほかにもいろいろ理由を悶々と考えて、さっきのおまえ以上に悩んでるはずだろうな」
「そんな……。美羽姉はなにも悪くないのに」
「好き合ってるから、相手に非があるとは互いに思わない。付き合いたての恋人って、特にそういうところがあるんだよ」
副編集長は一ノ瀬から両手を放したと思ったら、すぐ傍にあるオデコを苛立ちを込めて容赦なく叩いた。叩かれた一ノ瀬は「いでっ!」なんて変な声を出してリアクションする。
ピリピリする皮膚の痛みに顔を歪ませながら一ノ瀬が顔をあげると、室内に白鳥の姿はすでになく、扉が開け放たれたままだった。