純愛カタルシス💞純愛クライシス
「それで成臣は、どうしてしけたツラしていたんだ?」
軽いため息まじりに問いかけた副編集長に、一ノ瀬はやるせなさそうな表情をする。
「昔の勘違いが、今になってわかったって感じ。まさに時限爆弾。衝撃がハンパなくてな……」
「その勘違いを、きちんと正すことはしないのかよ」
副編集長は白鳥が座っていたパイプ椅子に座り、目の前を見ながら話しかけた。
「勘違いのまま笑って過ごせたら、どんなにいいだろうな」
いつものようにへらっと笑った一ノ瀬の笑みが、瞬く間に消える。それを横目で見たからこそ、副編集長はアドバイスするしかなかった。
「相手のいることならなおさら、とっとと決着をつけたほうがいい。白鳥みたいに沼ったら、ドツボに嵌ることになる」
「わかってるさ、そんなことくらい。わかってるのに……」
「だったら余計なことを考えられないように、仕事を与えてやるわ!」
副編集長は突如オネエ言葉に戻り、パイプ椅子から勢いよく腰をあげ、一ノ瀬の腕を引っ張った。
「ぁあ? 仕事って、もう演歌歌手の撮影はしないぞ……」
「なにを言ってんの。今、話題の人物よ。なんてったって、上條良平なんだから!」
「はぁあ?」
上條の名前を聞いた途端に、一ノ瀬の表情が憂鬱なものになった。
「私が書いた雑誌を持って、お宅訪問したのよぅ♡ なんでも働き口が見つからなくて、かなりお金に困ってるって話でね。謝礼を払う約束で、インタビューを引き受けてもらったってわけ!」
「へー、そーなんだー」
テンション高く喋る副編集長に対し、一ノ瀬は興味なさげに棒読みで反応した。
「あと30分で、ここにやって来ることになってんのよねぇ。白鳥がいなくなったことだし、一ノ瀬が撮影してよ」
「俺はグラビア担当。ほかをあたってくれ」
「あらそう、別にいいわよ。例の事件のとき、春菜に殴られたと警察官に勘違いされて、救急車に無理やり乗せられた格好悪いこと、みんなに暴露しちゃうけど、それでもよくって?」
一ノ瀬は自分に背中を向けて会議室から出て行こうとした副編集長に、慌てて飛びついた。
「アキラ、それだけは本当に勘弁してくれ……」
「そぉよねぇ、雑誌で話題になった傷害事件の現場にいたアンタは、戦場カメラマン的な英雄扱いを編集部でされてるっていうのに、そんな格好悪いことを、ほかのヤツらに知られたくはないわよねぇ」
「あのときのことをアキラに全部暴露した、隠し事のできない自分の性格を恨むしかない……」
こうして副編集長のてのひらの上に転がされた一ノ瀬は、したくない仕事を進んでやる羽目になってしまった。ちなみにこの脅しがしばらくの間続くことを、一ノ瀬はまだ知らない。
軽いため息まじりに問いかけた副編集長に、一ノ瀬はやるせなさそうな表情をする。
「昔の勘違いが、今になってわかったって感じ。まさに時限爆弾。衝撃がハンパなくてな……」
「その勘違いを、きちんと正すことはしないのかよ」
副編集長は白鳥が座っていたパイプ椅子に座り、目の前を見ながら話しかけた。
「勘違いのまま笑って過ごせたら、どんなにいいだろうな」
いつものようにへらっと笑った一ノ瀬の笑みが、瞬く間に消える。それを横目で見たからこそ、副編集長はアドバイスするしかなかった。
「相手のいることならなおさら、とっとと決着をつけたほうがいい。白鳥みたいに沼ったら、ドツボに嵌ることになる」
「わかってるさ、そんなことくらい。わかってるのに……」
「だったら余計なことを考えられないように、仕事を与えてやるわ!」
副編集長は突如オネエ言葉に戻り、パイプ椅子から勢いよく腰をあげ、一ノ瀬の腕を引っ張った。
「ぁあ? 仕事って、もう演歌歌手の撮影はしないぞ……」
「なにを言ってんの。今、話題の人物よ。なんてったって、上條良平なんだから!」
「はぁあ?」
上條の名前を聞いた途端に、一ノ瀬の表情が憂鬱なものになった。
「私が書いた雑誌を持って、お宅訪問したのよぅ♡ なんでも働き口が見つからなくて、かなりお金に困ってるって話でね。謝礼を払う約束で、インタビューを引き受けてもらったってわけ!」
「へー、そーなんだー」
テンション高く喋る副編集長に対し、一ノ瀬は興味なさげに棒読みで反応した。
「あと30分で、ここにやって来ることになってんのよねぇ。白鳥がいなくなったことだし、一ノ瀬が撮影してよ」
「俺はグラビア担当。ほかをあたってくれ」
「あらそう、別にいいわよ。例の事件のとき、春菜に殴られたと警察官に勘違いされて、救急車に無理やり乗せられた格好悪いこと、みんなに暴露しちゃうけど、それでもよくって?」
一ノ瀬は自分に背中を向けて会議室から出て行こうとした副編集長に、慌てて飛びついた。
「アキラ、それだけは本当に勘弁してくれ……」
「そぉよねぇ、雑誌で話題になった傷害事件の現場にいたアンタは、戦場カメラマン的な英雄扱いを編集部でされてるっていうのに、そんな格好悪いことを、ほかのヤツらに知られたくはないわよねぇ」
「あのときのことをアキラに全部暴露した、隠し事のできない自分の性格を恨むしかない……」
こうして副編集長のてのひらの上に転がされた一ノ瀬は、したくない仕事を進んでやる羽目になってしまった。ちなみにこの脅しがしばらくの間続くことを、一ノ瀬はまだ知らない。