純愛カタルシス💞純愛クライシス
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次の日から、堀田課長は出勤しなかった。普通はあんな騒ぎを起こして平然と出勤できる神経は、誰も持ち合わせていないだろうし、会社として罰を与えると田所部長が宣言していたので、来ないことはみんなわかっていた。
部署の職員は昨日のやり取りを直接見てた関係で、懲戒解雇という形で辞めさせられたことがなんとなくわかっていたものの、詳しい内容については明らかにされなかった。
その日のお昼休み、田所部長がわざわざ私を呼んで、堀田課長が懲戒解雇になった理由を個人的に教えてくれた。今回の出来事の関係者で、私の口が軽くないから伝えられたのだけれど、その内容が衝撃的すぎて、最初は言葉が出なかった。
なんでも堀田課長は結婚する前から、出会い系サイトで女性と後腐れのない関係をおこなっていたそうで、結婚にはまったく興味がなかったそう。
だけど同期の高木さんが、自分たちの教育係の先輩といい仲になったのを見、営業成績と一緒に先を越されたように感じたことがキッカケで、彼女を奪ったという。
そのことがショックとなり、成績が落ちていく高木さんを踏み台にして、課長になった彼は、愛良さんと結婚。そのまま幸せで平穏な生活をするハズだったのに、刺激のない毎日が退屈だった彼は、ふたたび出会い系サイトで女漁りをはじめた。
堀田課長は『カジュアル不倫』とそのことを称し、月に2~3回不貞行為をおこなって、サイトで出逢った女性にその気がないときは、薬を使ってみだらな行為にはげみ、奥さんに気づかれるかどうかを試して、刺激になる材料をみずから作っていた。
「田所部長、堀田課長がおこなっていた不貞行為が月に2~3回って、少なくても1年間で10人を超えてるじゃないですか……」
「ああ。しかもそれが結婚三年の間だからね。奥さんには、病院に行くように勧めておいた。このまま離婚する話を聞いたよ」
「ちなみに、どうして私に手を出そうとしたんでしょうね?」
出会い系サイトを使って女漁りしていた堀田課長は、今まで会社の女のコに手を出していないのは、面倒なことにならないようにと考えていたからだろう。
「それね、俺も気になって訊ねてみた。そしたら小野寺さんは大人しそうで、自分の言いなりになりそうな感じだったから、手を出したんだって。小野寺さんはとてもしっかりした女性なのに、人を見かけだけで判断したから、痛い目を見たってことだな」
「アハハ……。隙を見せないように、もっと気をつけます」
日頃の態度を思い返していたら、田所部長に肩をぽんぽん叩かれた。
「ウチの部署の連中は、小野寺さんは普段からボイレコを持ち歩く、とても慎重な人ってわかったわけだし、とある有名人の元奥さんって知ったら、みんながそろって度肝を抜かれるだろうねぇ」
「それって――」
私があの上條良平の元妻だって、田所部長が知っているということで。
「もちろん誰にも言わないから安心して。午後からも業務頑張ってください」
朗らかな表情を顔に滲ませながら、仕事の話をするように堀田課長のことを教えてもらったため、内容について疑問に思うことなく、これまでの話を聞いていたのだけれど。
「田所部長、堀田課長からこの話をすべて聞き出すのに、どんな手を使ったんですか?」
私が訊ねた途端に、蛍光灯の明かりで光り輝く頭に手をやり、やれやれと呟いた。
「小野寺さんは、やっぱりどこか普通の人とは違うね。いつもならこういう話を聞いたあとは、みんな疑問に思わずに去って行くのに」
「田所部長があまりに流暢に話をするせいで、あれって疑問に思っただけです」
「会社が大きくなると、小さな不正とか見過ごされそうになるんだが、そういうのにいち早く気づいて対応してくれる、秘密裏の部署があってね。そこにおまかせしているんだよ。ちなみに今回の堀田課長のことは、個人的なことだったから、気づけなかったというわけ」
「なるほど。専門の部署だから、トラブル対応に慣れているということですね」
「小野寺さんさえよければなんだけど、その部署に異動する気はないだろうか?」
田所部長に訊ねなければ、こんな話が出てこなかったハズなのに、墓穴を掘った形でスカウトされてしまい、困惑するしかなかったのである。
次の日から、堀田課長は出勤しなかった。普通はあんな騒ぎを起こして平然と出勤できる神経は、誰も持ち合わせていないだろうし、会社として罰を与えると田所部長が宣言していたので、来ないことはみんなわかっていた。
部署の職員は昨日のやり取りを直接見てた関係で、懲戒解雇という形で辞めさせられたことがなんとなくわかっていたものの、詳しい内容については明らかにされなかった。
その日のお昼休み、田所部長がわざわざ私を呼んで、堀田課長が懲戒解雇になった理由を個人的に教えてくれた。今回の出来事の関係者で、私の口が軽くないから伝えられたのだけれど、その内容が衝撃的すぎて、最初は言葉が出なかった。
なんでも堀田課長は結婚する前から、出会い系サイトで女性と後腐れのない関係をおこなっていたそうで、結婚にはまったく興味がなかったそう。
だけど同期の高木さんが、自分たちの教育係の先輩といい仲になったのを見、営業成績と一緒に先を越されたように感じたことがキッカケで、彼女を奪ったという。
そのことがショックとなり、成績が落ちていく高木さんを踏み台にして、課長になった彼は、愛良さんと結婚。そのまま幸せで平穏な生活をするハズだったのに、刺激のない毎日が退屈だった彼は、ふたたび出会い系サイトで女漁りをはじめた。
堀田課長は『カジュアル不倫』とそのことを称し、月に2~3回不貞行為をおこなって、サイトで出逢った女性にその気がないときは、薬を使ってみだらな行為にはげみ、奥さんに気づかれるかどうかを試して、刺激になる材料をみずから作っていた。
「田所部長、堀田課長がおこなっていた不貞行為が月に2~3回って、少なくても1年間で10人を超えてるじゃないですか……」
「ああ。しかもそれが結婚三年の間だからね。奥さんには、病院に行くように勧めておいた。このまま離婚する話を聞いたよ」
「ちなみに、どうして私に手を出そうとしたんでしょうね?」
出会い系サイトを使って女漁りしていた堀田課長は、今まで会社の女のコに手を出していないのは、面倒なことにならないようにと考えていたからだろう。
「それね、俺も気になって訊ねてみた。そしたら小野寺さんは大人しそうで、自分の言いなりになりそうな感じだったから、手を出したんだって。小野寺さんはとてもしっかりした女性なのに、人を見かけだけで判断したから、痛い目を見たってことだな」
「アハハ……。隙を見せないように、もっと気をつけます」
日頃の態度を思い返していたら、田所部長に肩をぽんぽん叩かれた。
「ウチの部署の連中は、小野寺さんは普段からボイレコを持ち歩く、とても慎重な人ってわかったわけだし、とある有名人の元奥さんって知ったら、みんながそろって度肝を抜かれるだろうねぇ」
「それって――」
私があの上條良平の元妻だって、田所部長が知っているということで。
「もちろん誰にも言わないから安心して。午後からも業務頑張ってください」
朗らかな表情を顔に滲ませながら、仕事の話をするように堀田課長のことを教えてもらったため、内容について疑問に思うことなく、これまでの話を聞いていたのだけれど。
「田所部長、堀田課長からこの話をすべて聞き出すのに、どんな手を使ったんですか?」
私が訊ねた途端に、蛍光灯の明かりで光り輝く頭に手をやり、やれやれと呟いた。
「小野寺さんは、やっぱりどこか普通の人とは違うね。いつもならこういう話を聞いたあとは、みんな疑問に思わずに去って行くのに」
「田所部長があまりに流暢に話をするせいで、あれって疑問に思っただけです」
「会社が大きくなると、小さな不正とか見過ごされそうになるんだが、そういうのにいち早く気づいて対応してくれる、秘密裏の部署があってね。そこにおまかせしているんだよ。ちなみに今回の堀田課長のことは、個人的なことだったから、気づけなかったというわけ」
「なるほど。専門の部署だから、トラブル対応に慣れているということですね」
「小野寺さんさえよければなんだけど、その部署に異動する気はないだろうか?」
田所部長に訊ねなければ、こんな話が出てこなかったハズなのに、墓穴を掘った形でスカウトされてしまい、困惑するしかなかったのである。