純愛カタルシス💞純愛クライシス
※8時間耐久のお話は、セカンドレディに鉄槌を!の裏話的なナニか内の『一ノ瀬と千草ちゃん』に掲載されてます!
「は?」
信じられないセリフがキッカケで、グラスの中身を見ていた視線を、慌てて隣に移す。千草ちゃんの真剣なまなざしが、俺にグサグサ突き刺さった。
(これ、マジなヤツだ――)
「やっ、なにを言い出すかと思ったら。こんなオッサンのどこが好きなんだか。千草ちゃん、相当趣味が悪いですって」
豪快に笑いながら、千草ちゃんの肩をバシバシ叩く。なんとかしてこの告白を、冗談にしてやろうと思った。
「成臣くんがオッサンなら、私はオバサンだよ」
「いやいや、千草ちゃんは童顔だから、まだお姉さんで通すことができる。だから俺なんてやめて、もっといいヤツを見つけたらいい」
「逃げないで!」
語気を強めた千草ちゃんの手が、俺のジャケットの襟を掴んで、体ごと彼女の顔に引き寄せた。
「成臣くん、貴方と再会したときから感じてた。ずっと見えない線を引かれて、距離をおかれていたこと」
「それは――」
詰められた距離は、視線を逸らすことで千草ちゃんを拒否ることができるが、なぜかそれができない。大きな瞳が俺の中にあるなにかを見極めようと、痛いくらいに凝視されるせいで、掴まれたジャケットを掴む手を外すことすらできなかった。
「私が大学生のときは、そんなことされなかった。あの頃の貴方は、もっとキラキラしていたし。爽やか系男子って感じで、誰とでも仲良くしてた。今は死んだ魚の目をしてるわ」
「ハハッ、それはすごい言われようだな」
「それでも私は、成臣くんが好きよ」
(なんだこれ。追い詰めるように告白されたことがないせいで、拒否り方が全然わからねぇ……)
「成臣くんが好きなの」
「……千草ちゃんの気持ちは嬉しいが、俺は誰かに好かれるような男じゃない。一夜限りにするなら、喜んで相手をしてやる」
言った途端に襟を掴んでいた千草ちゃんの拳に力が入り、俺の体を一瞬だけ揺らした。
「なに寝ぼけたことを言ってるの。一夜限りになんてするワケがないでしょ。貴方ほどの人を捕まえておかなきゃ、どこかに飛んでいってしまうもの」
「やめてくれ。千草ちゃんが思うような立派な人間じゃない」
「私だってそう。彼氏に振られたくらいでヤケになって、いろんな男とヤっちゃう、残念なくらいにふしだらな女よ」
「それは過去のことだろ。今の千草ちゃんはそんなふうに見えない」
「そうね、成臣くんのことを好きになってから、ちゃんとしようって思うことができた」
メガネのレンズ越しから、熱のこもったまなざしを注がれたことで、事実を白日の下に晒すなら、このタイミングしかないと、嘲るように笑いながら口を開いた。
「俺はそれの真逆をいったってワケだ! 人妻との不倫に、仕事相手のモデルと一夜限りの行為を未だに繰り返してる。そんな男を、まだ愛することができるのか?」
声を大にして突きつけた俺の過去。それを聞いた千草ちゃんの瞳が、大きく見開かれる。
「成臣くんが、不倫……?」
「したよ。人妻なのにその人を愛した。そして裏切られた。今後誰かを好きになって、相手からの嫉妬や自分のヤキモチで疲弊したくないし、裏切られたくない。もうたくさんなんだ……」
俺は思いきって千草ちゃんが掴むジャケットの手を叩き落し、逃げるようにバーをあとにした。
もう二度彼女と逢うことはないと思いながら、帰路に着いたのだった。
「は?」
信じられないセリフがキッカケで、グラスの中身を見ていた視線を、慌てて隣に移す。千草ちゃんの真剣なまなざしが、俺にグサグサ突き刺さった。
(これ、マジなヤツだ――)
「やっ、なにを言い出すかと思ったら。こんなオッサンのどこが好きなんだか。千草ちゃん、相当趣味が悪いですって」
豪快に笑いながら、千草ちゃんの肩をバシバシ叩く。なんとかしてこの告白を、冗談にしてやろうと思った。
「成臣くんがオッサンなら、私はオバサンだよ」
「いやいや、千草ちゃんは童顔だから、まだお姉さんで通すことができる。だから俺なんてやめて、もっといいヤツを見つけたらいい」
「逃げないで!」
語気を強めた千草ちゃんの手が、俺のジャケットの襟を掴んで、体ごと彼女の顔に引き寄せた。
「成臣くん、貴方と再会したときから感じてた。ずっと見えない線を引かれて、距離をおかれていたこと」
「それは――」
詰められた距離は、視線を逸らすことで千草ちゃんを拒否ることができるが、なぜかそれができない。大きな瞳が俺の中にあるなにかを見極めようと、痛いくらいに凝視されるせいで、掴まれたジャケットを掴む手を外すことすらできなかった。
「私が大学生のときは、そんなことされなかった。あの頃の貴方は、もっとキラキラしていたし。爽やか系男子って感じで、誰とでも仲良くしてた。今は死んだ魚の目をしてるわ」
「ハハッ、それはすごい言われようだな」
「それでも私は、成臣くんが好きよ」
(なんだこれ。追い詰めるように告白されたことがないせいで、拒否り方が全然わからねぇ……)
「成臣くんが好きなの」
「……千草ちゃんの気持ちは嬉しいが、俺は誰かに好かれるような男じゃない。一夜限りにするなら、喜んで相手をしてやる」
言った途端に襟を掴んでいた千草ちゃんの拳に力が入り、俺の体を一瞬だけ揺らした。
「なに寝ぼけたことを言ってるの。一夜限りになんてするワケがないでしょ。貴方ほどの人を捕まえておかなきゃ、どこかに飛んでいってしまうもの」
「やめてくれ。千草ちゃんが思うような立派な人間じゃない」
「私だってそう。彼氏に振られたくらいでヤケになって、いろんな男とヤっちゃう、残念なくらいにふしだらな女よ」
「それは過去のことだろ。今の千草ちゃんはそんなふうに見えない」
「そうね、成臣くんのことを好きになってから、ちゃんとしようって思うことができた」
メガネのレンズ越しから、熱のこもったまなざしを注がれたことで、事実を白日の下に晒すなら、このタイミングしかないと、嘲るように笑いながら口を開いた。
「俺はそれの真逆をいったってワケだ! 人妻との不倫に、仕事相手のモデルと一夜限りの行為を未だに繰り返してる。そんな男を、まだ愛することができるのか?」
声を大にして突きつけた俺の過去。それを聞いた千草ちゃんの瞳が、大きく見開かれる。
「成臣くんが、不倫……?」
「したよ。人妻なのにその人を愛した。そして裏切られた。今後誰かを好きになって、相手からの嫉妬や自分のヤキモチで疲弊したくないし、裏切られたくない。もうたくさんなんだ……」
俺は思いきって千草ちゃんが掴むジャケットの手を叩き落し、逃げるようにバーをあとにした。
もう二度彼女と逢うことはないと思いながら、帰路に着いたのだった。