純愛カタルシス💞純愛クライシス
♡♡♡
途中で早めのお昼を、コンビニで済ませることになった。昼食を食べながら、自分でヘルメットを被れるようにいろいろ質問したり、友達らしい会話を自然と心がける。
私を気遣ったのか、成臣くんも積極的に話しかけてくれたおかげで、バイクの話に花が咲いたけど、盛りあがりもそこそこに、成臣くんが行きたい場所に向かった。
バイクに乗ってしまえば、道中は会話がほぼないので寂しさを紛らわせるべく、ここぞとばかりに成臣くんに抱きつき、心の中で大好きコールを連呼する。ずっと我慢してる想いをぶつけるように、何度も何度も好きという言葉を繰り返した。
そんな私に、信号待ちでヘルメットのシールドをあげた成臣くんが振り返り、エンジン音に負けないような声を出す。
「もう少しで到着する。疲れてないか?」
本当は私もシールドをあげて話をしたかったけど、信号がいつ変わるかわからないので、頷くだけにしておいた。
「そうか、それはよかった……」
瞳を細めてほほ笑む成臣くんの様子は、なんだかいつもと違うように見えた。
(たぶんこれは、私の知らない成臣くん。大学生の頃の、フレンドリーな感じとも違う。線を引かれて接していたときと、真逆な感じというか)
ふたりで遠出して、距離を縮めたのが関係したのか、それとも気分がリフレッシュしたのかわからなかったけど、知らない成臣くんを見ることができて、とても嬉しかった。
やがてバイクは、海岸線のとある駐車場に停車した。エンジンを切り、先に降りた成臣くんが私の前に大きな手を差し出す。昼食をとったコンビニではなんとか自力で降りたので、こうして目の前に手を出されてしまったことに、戸惑いを隠せなかった。
「足元が砂利だから危ないだろ。遠慮せずに掴んで」
「あ、うん」
平静を装いながら手を置くと、成臣くんの大きな手が私の手をぎゅっと強く握りしめて、しっかり支えてくれた。
(ずっとこうしていたい。成臣くんの大きな手に触れられるのなら、砂利だろうがなんだろうが、どこにでもついて行きます)
危なげなく地上に降り立ったら、掴んでいた手を放された。それは当然のことなんだけど、手放される瞬間微妙に手の力が入ってしまい、彼の指先を掴んで動きを引き止めてしまった。
「どうした?」
成臣くんは、私に掴まれた手と顔を交互に見ながら訊ねる。
「あ~なんか、ふわふわした感じが残ってるみたい」
慌てて自分の手を引っ込めて後ろに隠し、反対の手でシールドをあげて、あさっての方向を向きながら、しどろもどろに適当なことを口走ってしまった。
「やっぱり疲れたよな。長時間付き合わせて悪かった」
そう言うと、手早くヘルメットを外した成臣くんが、私のヘルメットも外してくれただけじゃなく、肩に腕を回して座れそうな場所まで誘導してくれるとか、興奮して鼻息が荒くなりかけた。
(友達の距離感を維持しようとしたら、変なところに力が入って、無理がかかる!)
「千草ちゃん、大丈夫か?」
「だっだだ大丈夫、だよ、たぶん」
肩に腕を回された時点で天にも昇る気分で、このときの私は本当に足元がふわふわして、かなり危なげだった。この様子を臥龍岡先輩が見ていたら、絶対に叱られるであろう。
「息遣いが荒らそうだし、なんか無理してない?」
「いっ息遣いが荒いのは、ヘルメットから解放されて頭が軽くなった反動と言いますか、とにかく酸素を補給してるみたいな、感じみたいな!」
「だったらついでに、全部解放してやる」
挙動不審な私を見下ろした成臣くんは嬉しそうに口角をあげたまま、肩に回していた手で革ジャンのチャックを素早く下ろし、手際よく脱がしてくれた。そしてベンチのあるところまで私を連れて行き、そこに座らせると、バイクを停めてある場所にひとりで戻ってしまった。
「成臣くん……」
今日はいっさい線を引かず、やけに優しく接してくれる。それがとても嬉しいのに、ずっと続く気がしないのは、成臣くんが臥龍岡先輩に命令されて行動しているのがわかってるから。
友達として私に優しく接してくれることが、こんなにも切なくなるとは、思いもしなかった。
途中で早めのお昼を、コンビニで済ませることになった。昼食を食べながら、自分でヘルメットを被れるようにいろいろ質問したり、友達らしい会話を自然と心がける。
私を気遣ったのか、成臣くんも積極的に話しかけてくれたおかげで、バイクの話に花が咲いたけど、盛りあがりもそこそこに、成臣くんが行きたい場所に向かった。
バイクに乗ってしまえば、道中は会話がほぼないので寂しさを紛らわせるべく、ここぞとばかりに成臣くんに抱きつき、心の中で大好きコールを連呼する。ずっと我慢してる想いをぶつけるように、何度も何度も好きという言葉を繰り返した。
そんな私に、信号待ちでヘルメットのシールドをあげた成臣くんが振り返り、エンジン音に負けないような声を出す。
「もう少しで到着する。疲れてないか?」
本当は私もシールドをあげて話をしたかったけど、信号がいつ変わるかわからないので、頷くだけにしておいた。
「そうか、それはよかった……」
瞳を細めてほほ笑む成臣くんの様子は、なんだかいつもと違うように見えた。
(たぶんこれは、私の知らない成臣くん。大学生の頃の、フレンドリーな感じとも違う。線を引かれて接していたときと、真逆な感じというか)
ふたりで遠出して、距離を縮めたのが関係したのか、それとも気分がリフレッシュしたのかわからなかったけど、知らない成臣くんを見ることができて、とても嬉しかった。
やがてバイクは、海岸線のとある駐車場に停車した。エンジンを切り、先に降りた成臣くんが私の前に大きな手を差し出す。昼食をとったコンビニではなんとか自力で降りたので、こうして目の前に手を出されてしまったことに、戸惑いを隠せなかった。
「足元が砂利だから危ないだろ。遠慮せずに掴んで」
「あ、うん」
平静を装いながら手を置くと、成臣くんの大きな手が私の手をぎゅっと強く握りしめて、しっかり支えてくれた。
(ずっとこうしていたい。成臣くんの大きな手に触れられるのなら、砂利だろうがなんだろうが、どこにでもついて行きます)
危なげなく地上に降り立ったら、掴んでいた手を放された。それは当然のことなんだけど、手放される瞬間微妙に手の力が入ってしまい、彼の指先を掴んで動きを引き止めてしまった。
「どうした?」
成臣くんは、私に掴まれた手と顔を交互に見ながら訊ねる。
「あ~なんか、ふわふわした感じが残ってるみたい」
慌てて自分の手を引っ込めて後ろに隠し、反対の手でシールドをあげて、あさっての方向を向きながら、しどろもどろに適当なことを口走ってしまった。
「やっぱり疲れたよな。長時間付き合わせて悪かった」
そう言うと、手早くヘルメットを外した成臣くんが、私のヘルメットも外してくれただけじゃなく、肩に腕を回して座れそうな場所まで誘導してくれるとか、興奮して鼻息が荒くなりかけた。
(友達の距離感を維持しようとしたら、変なところに力が入って、無理がかかる!)
「千草ちゃん、大丈夫か?」
「だっだだ大丈夫、だよ、たぶん」
肩に腕を回された時点で天にも昇る気分で、このときの私は本当に足元がふわふわして、かなり危なげだった。この様子を臥龍岡先輩が見ていたら、絶対に叱られるであろう。
「息遣いが荒らそうだし、なんか無理してない?」
「いっ息遣いが荒いのは、ヘルメットから解放されて頭が軽くなった反動と言いますか、とにかく酸素を補給してるみたいな、感じみたいな!」
「だったらついでに、全部解放してやる」
挙動不審な私を見下ろした成臣くんは嬉しそうに口角をあげたまま、肩に回していた手で革ジャンのチャックを素早く下ろし、手際よく脱がしてくれた。そしてベンチのあるところまで私を連れて行き、そこに座らせると、バイクを停めてある場所にひとりで戻ってしまった。
「成臣くん……」
今日はいっさい線を引かず、やけに優しく接してくれる。それがとても嬉しいのに、ずっと続く気がしないのは、成臣くんが臥龍岡先輩に命令されて行動しているのがわかってるから。
友達として私に優しく接してくれることが、こんなにも切なくなるとは、思いもしなかった。