偽りの恋人と生贄の三日間
一日目

恋人としてすごして

 三つ取られると、向こうへ行ってしまう。

 魔力、心臓、そして。



「あのね、お願いがあるの。今日から恋人としてすごして」

 まだ淡い朝の光が差しこむ窓には、金のタッセルでくくられたえんじの織カーテン。壁の棚には隙間なくつまった本、円卓にはボードゲームとカード。ところどころ置かれたひとり掛けのソファーの下に、つた模様が織られたじゅうたん。飾り棚には色鮮やかな水タバコの瓶、乾燥した植物がつめこまれたいくつもの瓶。

 ラベルに、子どもでも知っている使用が禁じられている植物の名前が書かれている。吸えば夢のような幻覚と感覚に溺れる。

 最後なのだから、決まり事など守らず楽しんでいい、という押しつけのあわれみなのかもしれない。つまるところ、三つさえそろっていれば、ほかはどんなに体が蝕まれていようがよいということだ。

 リコは、ソファーに座る自分の前にひざまずく青年を見下ろす。

 リコを仰ぐ瞳は黄緑で、見つめていると橙や緑が混じる。宝石のようにきららかな瞳は本当にあるのだな、と見るたび思う。

 そうして、今黄緑色の瞳は、あきらかに困っている。

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