偽りの恋人と生贄の三日間
 キトエが交換しても弱い数字になるという保証はない。けれどキングより弱い数字のほうが多いので、逆に『変えないで!』という必死な表情を作ってだましてみることにした。キトエは戸惑ったようで、「そのままでいい」と反対に不審がられてしまった。

「じゃあ、勝負」

 額にあてていたカードを中央へひらく。キトエはハートのキング、リコはダイヤのジャック。

「ああ、また負けちゃった。カード運ないなあ」

「俺も分かりやすいと思うけど、リコも大概分かりやすいよ」

「え? そうなの? 顔に出てる?」

「顔もそうだけど、何ていうか態度が」

 キトエがおかしそうに微笑む。その瞳がとても温かくて幸せで、胸が痛くなった。このまま時間よ止まれと叫びたいほど願った。

「お願い、ふたつめは?」

「特にない」

「もうちょっとちゃんと考えてよう。ないならないで何だか傷付く」

 むくれてみせると、キトエは「そういうつもりじゃない」と目に見えて狼狽した。もちろん冗談で言ったのだが、キトエは主に忠実だ。お願いはほとんど聞いてくれないけれど。

「冗談だよ。いいよ、ふたつめのお願いも取っておいて」

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