偽りの恋人と生贄の三日間
 思わず円卓から立ち上がっていた。捨ててあったカードもひらく。キトエはクラブの五、リコはクラブのクイーン。カードを交換していなければクイーン同士だった。たしかマークにも強さがあって、円卓の端に置いていたカードゲームの本をひらくと、強いほうからスペード、ハート、ダイヤ、クラブの順だった。

 キトエはダイヤのクイーン、リコはクラブのクイーンだったから、交換しなければ負けていた。

「やっと勝てた! じゃあお願い」

 リコはキトエの隣へ歩いていって、両手を広げた。

「ぎゅってして」

 リコを仰いだキトエは、目を見開いて、あからさまに視線をさまよわせる。

「主にそんなこと」

「できるわけない。でしょ? 毎回同じなんだから。別に親愛表現なんだから普通でしょ?」

「主と従者は同格じゃないんだから、親愛表現でもそんなことしないだろ」

 動揺しているキトエが可愛くて、思わず笑ってしまう。こうやってキトエと言い合っているときが一番幸せなのかもしれないと、思った。

「そう言われると思ってたから、もうひとつ考えてたんだ」

 そうして穏やかに、真剣に、微笑んだ。

「キスして」

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