偽りの恋人と生贄の三日間
キトエの作ってくれた炒り卵に、少しだけ口をつけた。キトエはリコの作ったぼそぼその炒り卵を全部食べてくれた。ほとんど言葉を交わせなかった。
「キトエ。行きたいところがあるの」
朝食を終えて、リコは城の階段を上った。キトエの足音がついてくる。光とともに視界がひらける。
濃紺に金の草花が織られたじゅうたん、精緻な幾何学模様のタイルが壁全面に隙間なく埋めこまれ、高く高くドームになった天井は、赤、緑、青、黄と濃く鮮やかなステンドグラスが、タイルと同じように細やかな幾何学模様を描いていた。
一日目に城内探検で訪れた礼拝堂だ。本当は毎日祈りを捧げに来るのがこの国の民の務めなのだが、リコは神様が嫌いだったので、あえて戒を破った。ここにはとがめる者もいない。もしいるとすれば、神自身だろう。
礼拝堂に足を踏み入れる。ステンドグラスの真下、仰いだ鮮やかすぎる光に目を細める。空間が大きすぎるのか、吸いこまれたように何も聞こえない。
距離を取って佇んでいたキトエを、振り返る。
「キトエ。お願いじゃなくて、命令。わたしが勝ったら今度こそ命令を聞いて」
「キトエ。行きたいところがあるの」
朝食を終えて、リコは城の階段を上った。キトエの足音がついてくる。光とともに視界がひらける。
濃紺に金の草花が織られたじゅうたん、精緻な幾何学模様のタイルが壁全面に隙間なく埋めこまれ、高く高くドームになった天井は、赤、緑、青、黄と濃く鮮やかなステンドグラスが、タイルと同じように細やかな幾何学模様を描いていた。
一日目に城内探検で訪れた礼拝堂だ。本当は毎日祈りを捧げに来るのがこの国の民の務めなのだが、リコは神様が嫌いだったので、あえて戒を破った。ここにはとがめる者もいない。もしいるとすれば、神自身だろう。
礼拝堂に足を踏み入れる。ステンドグラスの真下、仰いだ鮮やかすぎる光に目を細める。空間が大きすぎるのか、吸いこまれたように何も聞こえない。
距離を取って佇んでいたキトエを、振り返る。
「キトエ。お願いじゃなくて、命令。わたしが勝ったら今度こそ命令を聞いて」