偽りの恋人と生贄の三日間
 自分の魔力でも当たれば傷を負う。リコに当たるよう弾くべきなのに、本気を出さないと死ぬと忠告したのに、キトエはリコをかばっている。

「ねえ本当に死ぬから!」

 右手を引いてほんの一瞬だけためを延ばす。

「レギオン」

 名もない魔力ではなく、青白い火花の塊がキトエの剣へぶつかって高い音を響かせる。魔力(レギオン)がはぜる音と剣とこすれ合う音が耳障りに続いて、キトエは後ろへ飛ばされた。爆発と爆風にリコは顔をかばう。

 薄い煙の向こうで、壊れた壁に埋まるようにキトエが顔を歪めていた。下がっていた剣を構え直す。苦しそうに、けれど痛みだけではない感情が混じっている。

「レギオン」

 容赦なくもう一度青白い火花を放つ。走りこんできたキトエが火花を、斬った。裂かれた火花はそれぞれ爆発する。

 風を利用してリコは飛び上がる。キトエの頭上を越えて、頭から地面へ。キトエの後ろ姿を上下逆さまに捉えて、息を吸う。

「パンレイト」

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