偽りの恋人と生贄の三日間
「お願い。命令じゃ、なくてっ……わたしを」

 唇を取られて言えなかった。キトエの半分になったように、きつく抱きしめられた。



 神様が嫌いだった。人に疎まれる容姿と、恐れられる魔力をリコに与えたから。

 生贄に選ばれたとき、神様は本当に性根が悪いと思った。心の中で神を嫌うリコのことが、神様のほうも本当に大嫌いなのだろうと思った。キトエとのささやかな幸せを奪って、生きていることすら許さないのかと。

 けれど、初めて神に感謝した。絶対に伝えることのない想いを、渡すことができた。

 とても意地悪な神よ。今までリコの願いなど聞き届けてくれなかった神よ。むだかもしれない。けれど何度だって祈ろう。

 キトエと、一緒にいたい。
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