偽りの恋人と生贄の三日間
 リコの力が城の結界に勝るのかは分からない。けれど魔女と忌まれた力なら、超えてみせる。

 時間だ。リコはひらいた囲いの前へ立つ。本来なら生贄が飛び降りる場所。けれど今は、神か呪いか分からない連鎖を断ち切るための場所だ。

 息を吸うように、魔力を巡らせる。リコの右手から赤い枝葉の紋様が腕へ、肩へ、頬へ、左手へ、脚へ伝わって淡く光を放つ。

 力を解放する。薄紫色の光の帯がたなびいて、リコを中心に円状に膨らんでいく。囲いを越えて、群青に沈んだ花畑へ、割れた月のある空へ。

 落雷に似た音とともに、薄紫の光に赤い光が走る。薄紫が触れた部分、城を覆うように赤い光が浮かび上がって大地が震える。

 同時にリコは叫んで自分の腕をつかんでいた。激痛があって、全身が、痛い。

(痛い、痛い、痛い!)

 赤い光は可視化された城の結界だ。リコの結界と拮抗して、まるで雷をこすり合わせたような音をたてている。

(痛い! 何で)

 魔力を緩めて、城の結界から離す。激しく触れ合っていた赤い光が消えて、元の紺色だけの静寂が戻る。痛みが引いていく。

(何で)

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