偽りの恋人と生贄の三日間
 結界を押し壊そうとすると、体の中からちぎられているように痛い。

 つながりが切れていないのか? けれど吸い取られて尽きていた魔力が戻っているから、つながりは切れているはずだ。今まで吸い取られていた自分の魔力が城の結界に使われていて、元は自分の魔力だから痛みを感じるのだろうか? そんな話は聞いたことがない。そもそも神か呪いかも分からないものに、ちゃんとした理を求めることが間違っているのかもしれない。

 ここから出られなければ死ぬ。どんなに痛みがあろうとも、結界を壊せなければ、死ぬ。

 力を強める。腕を握りしめる。たなびいた薄紫の光に、赤い光がぶつかって鳴動する。

 声がもれる。城を覆う赤い壁が姿を現す。雷がかみ合う音と、弾ける光、全身あらゆるところをちぎって投げられているような痛み。痛みから逃げたい。少しでも楽にならないかと体を折り曲げる。

(痛い痛い痛い!)

 終わらない。壊れろとさらに力をこめる。

 叫んでいた。息が吸えず、呼吸が浅く速い。頭のほうから冷たくなって、冷や汗が吹き出てくる。

(結界を壊したら、死ぬの?)

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