偽りの恋人と生贄の三日間
 控えめにキトエの胸を押すと、「あ、す、すまない」と腕をほどかれた。キトエの恥ずかしそうな表情のなかに、名残惜しさが混じっていたように見えて、うぬぼれかもしれないがくすぐったい気持ちになる。

 キトエの手を取る。

「行こう」

 黄緑の瞳が微笑んで、朝日の欠片の色を宿す。髪の色と同じ水色の宝石が、耳元で光の粒をきらめかせる。

「ああ」

 たとえ命あるかぎり逃げ続けなければいけないとしても、あの場所で命を終えていたことより不幸なことなどない。

 もう絶対に離さないと言った、騎士と、恋人と、キトエと、一緒に生きていく。
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