偽りの恋人と生贄の三日間
 悩んでいたら、リコがカードを掲げたまま円卓に身を乗り出してきた。探るように下からのぞきこんでくる。深い角度で服からのぞいた柔らかな胸元に目がいってしまい、先ほどの想像が蘇って慌てて目をそらした。また自分の汚らわしさを嫌悪して、リコの顔を見られなくなる。頬が熱をもつ。

「カード変えようかな」

 まだ身を乗り出したままのリコを直視しないように横目で見る。こちらが負けてしまうかもしれないが、賢明な判断だろう。

 リコが掲げていたカードを裏向きで捨てて、新たに引いた一枚を額に掲げる。ダイヤのジャック。悪くないカードだ。果たしてこちらも変えるか、変えないか。

「キトエは変える?」

 考えていたら、リコがあきらかに『変えないで!』と言わんばかりの必死な表情で見つめてきた。いきなり不審すぎる。リコもキトエも顔に出てしまって駆け引きには向いていないタイプだが、いくら何でもあからさますぎる。

「そのままでいい」

 リコが痛いところをつかれたように口を結ぶ。

「じゃあ、勝負」

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