偽りの恋人と生贄の三日間
「それだと騎士っぽくていつもと同じ感じでしょ? もっとこう、『あなたを想うと夜も眠れない!』とか激しい感じで、愛の告白をしてほしいんだけど」

 キトエがこれ以上ないくらい、困ったように眉根を寄せる。

「それは……その。リ、リコのことは……す、好きだ。昔から」

「ううん。何か違う。もうちょっと気持ち入れて!」

「そんな、これ以上は」

 気恥ずかしそうに目をそらしたキトエを見て、リコは気付く。心の熱が冷めていく。

「そう、だよね。ごめんなさい。命令してるだけで、本当は好きじゃないもんね」

 キトエに想い人がいたら、本当に嫌なことをしている。自分に呆れて、でも悲しくなって、笑ってしまう。

「違う!」

 立ち上がったキトエに両肩をつかまれて、体が固まる。

「俺は! リコを主として大切に想ってるし、本当に、本当にあなたのことを……愛してる」

 キトエの、黄緑に橙や青が揺れる瞳がとても痛そうに細まって、息が止まった。

 呪縛が解けたように慌てて両肩から手を離される。うつむかれる。

「すまない……その……リコの願いを叶える、恋人のかわりとして」

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