斉藤くんが、冷たくなった。
「気に入ったなら、斉藤くんにあげようか?」
「いやいや、うちアパートだし、こんなでかい冷凍庫なんて玄関ですら入らないかも」
「そっか。でも欲しくなったらいつでも言って」
「じゃあ、出世払いで予約だけしとこうかな」
「はは。斉藤くんならタダで使っていいよ」
そんな会話をしていたら、彼のスマホが鳴った。ポケットから取り出したあとも、スマホはずっと鳴り続けている。
「ひょっとして……真紀からの電話?」
「あー、うん。さっき俺からかけたから、その折り返しかも」
「もしかして今日、真紀と遊ぶ約束してた?」
「いや、遊ぼうって誘ったんだけど、用事があるって断られた。安村先輩とデートでもしてるんじゃね?」
斉藤くんは投げやりな言い方だった。浮気を許しているというより、開き直っていると表現したほうがいい。
今日、斉藤くんから突然『暇だ~』なんて、メッセージが来た時点で変だと思った。
きっと真紀と遊べないから、その暇潰しとして私に連絡してきたんだろう。