斉藤くんが、冷たくなった。
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「ねえ、うちの学校で行方不明の人がいるんでしょ?」
「えー、まだ見つかってないの? 怖すぎ」
生徒たちの話題は、朝から放課後までその話で持ちきりだ。うちのクラスでもずっと暗い空気が漂っていて、下校が遅くなる委員会も当面の間は活動休止になった。
一週間前から、教室には空席がひとつだけある。
みんなは祈りを込めて机の中に手紙を入れたりしている。
でも、私はその席が永遠に埋まらないことを知っている。
「やっと、ふたりきりになれたね」
放課後。私たちは体を密着させて甘い時間を過ごしていた。
「もう、最近ちっとも私にかまってくれないから、寂しかったんだよ?」
「ごめん、ごめん。だからちゃんと今日は埋め合わせしてるでしょ?」
頬を膨らませている〝真紀〟のおでこに私はキスをした。
私たちがこういう関係になったのは、一年ほど前。
真紀と友達になって、斉藤くんの相談をされていた。
好きじゃないのに、無理やり付き合うことにされてしまったこと。別れたいと言えば殴られて、もしも俺から離れることを選んだら恥ずかしい写真をばらまくって、真紀は彼から脅されていた。
ひどく怯えてる真紀のことを放っておけなくて、私は彼女の傍でひたすら寄り添ってきた。
それが友情から愛情に変わるまで、そんなに時間はかからなかったと思う。