斉藤くんが、冷たくなった。
3
斉藤くんを私の家に呼んだのは、彼の好きな漫画を貸してあげるという理由だけで、決してそこに下心はなかった。
「うわ、菅谷んちってひろっ!」
うちの庭を見ただけで、斉藤くんが目を丸くさせている。
「近所の人からは駄菓子屋御殿って呼ばれてるよ」
「なんで?」
「おじいちゃんが駄菓子屋をやってたから」
それで儲けていたかは知らないけれど、おじいちゃんの駄菓子屋はすごく繁盛していた。
今は駄菓子屋を畳んでしまったから、お店は取り壊されてしまったけど。
「俺、駄菓子屋って行ったことないかも?」
「え、本当に?」
「生まれも育ちも都会ですから」
「ちょっと、それって私が田舎者だって言ってます?」
「うそ、うそ。冗談デス」
真紀の浮気疑惑を通して、私たちはさらに仲よくなっていた。
元々友達だったとはいえ、こんなふうに冗談を言い合える関係ではなかったから、目に見えて彼との距離が近くなっているのを感じている。