「俺と噓結婚して欲しいんだ」「みんなを騙すってことですか!?」
お皿を洗うときの洗剤の付け方さえ、どう見られるか考えるだけで発狂しそうなのが、正直なところだ。
「向こうは、ただの手慣れた恋愛をこなす作業ですけど、私はハードルが激高いです……まだ、メイドの方がずいぶんマシ。仕様書を読み込んでどうにかなるでしょうし。ネジとか、ボルトを食べたら、それでボロが出そうですね」
「そう」
私の耳元のイヤリングに触れながら、メヌエラさんはにっこり笑う。
「でも、家だって、『彼』のことを知っているだけで、恋愛向きかはわからないわよ」