「俺と噓結婚して欲しいんだ」「みんなを騙すってことですか!?」
「そ、そうですけど……家に性的な感情がある人が、私の愛情なんてあるんですかね?」
ぶっちゃけ感情とかどうでもいいのだが。
「お前さんの気持ちはどうなんだ?」
「話聞いてたんじゃないんですか!?」
でかい剥げが、腕組みをする。
どっちだよ!!!!!
「気持ちなんてわからないですよ! 呼吸をして、食べるものがあって、行動がある! それだけが世界を回してるんです!!! 誰かを好きになりなさいだとか、そういうことを命令された日なんて、星に居た頃はぜー---んぜんなかったのに!!!!ひどすぎる!!!!!」
うわぁっ、と、その場に蹲る。
「掃除をしなさいとか、これを食べなさいとかならわかるけど、なにその、漠然とした指示!!!!!何すればいいのよ!!!!!!!なんでこんな嘘つかなきゃいけないんだ!!!!嘘つくのって苦手なのに!!!!!!!!!」
「うーむ……」
「ね? この子には、いろいろと欠如しているのよ。むしろあり過ぎるのかしら……」
メヌエラさんと、剥げがひそひそと話し合う。聞こえてるぞ。
みんなに嘘を吐けと言われた事、結局何をさせられるか分からない事、家を好きな事、そもそも相手が謎な事、全てがストレスを予感させていた。
「今までは、何をしていたんだ?」
男が聞いてきて、私はいつも通りに答えた。
「普通に過ごしてますが……全部私の行動は代理人がやるので。食事や睡眠や、何か学習とかくらいです。対人とかはやるべき仕事があるとしても、今まで外のみんなは勝手に私を避けていくので、そもそも会話しないし、代理人が運んでくるものを食べて、私の代わりに代理人が言葉を話してくれました! 今回のワープに、代理人も居ないことが初めてなんですけど、お見合いは代理人がしないのかな?」
「代理人? それは何の文化なんだ? この国には無いが……」