Re:スタート
「藤崎 悠です。忘れることができない彼女に届ける歌をうたいます」



そう言って俺はギターを鳴らし、歌い始めた。


切ないメロディー。

だけど、その中には幸せもあふれていて。

歌手になりたいという夢を諦めていた俺に、光をさしてくれた佳奈という存在。

佳奈を思い返せば思い返すほど、涙がこみあげてくる。


だんだんと震えてくる胸と声。

曲もラストのサビに近づいてくる。

サビは胸が裂けそうなほど痛く、悲しく切ない。


佳奈と出会える日まで、俺は何度だって声を響かせるよ……。


歌い終わると、俺は泣いていた。

自分でも気づかなかったけど、俺は歌いながら泣いていたんだ。


涙がひとつ、ふたつとこぼれる。

じーん、と胸に温かいものが残った。



「……聴いてくださり、ありがとうございます」



俺はギターを抱え、深々と頭を下げた。

あふれ続ける涙。


佳奈を、大切な人を想う気持ちってこんなにも温かいんだ。

そう思うと、幸せに満ち溢れた。
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