Re:スタート
「佳奈。少し座って話さない?」

「……うん」



私たちはベンチに腰掛けた。

悠がベンチにギターを立てかける。

悠と私の間にある距離感は近いようで遠い。

沈みかけの夕日が私たちを照らしてくれる。


何を話せばいいんだろう。

……分からないけど、今、私が一番伝えたいことは。



「オーディション合格、おめでとう」

「ありがとう。……でも、なんで、佳奈が合格のこと知ってるの? デビューはまだしていないのに」



悠はこちらを見て首を傾げた。

それは当然の疑問だろう。

悠は昨日、オーディションに合格したというだけで、まだデビューはしていないんだから。

私はそんな悠を見て苦笑した。



「知っているよ」

「……?」

「私、悠がエントリーしたオーディションの主催者のもとで働いているの」



目を見開き驚いた顔をする悠。

口をぽかんと開けて、どうやら声も出せないほどらしい。

そんな悠を見てくすっと笑う私。
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