Re:スタート
あれから1か月。

私も悠も忙しい日々を過ごしていた。

私は先輩たちと一緒に、新しいプロジェクトを立ち上げていた。

会議室に集まり、大きなホワイトボードに視線を向けて話し合う。

用意された椅子に座り、長机の上に資料を広げる。


新人歌手“藤崎 悠”を大きく売り出すためのプロジェクト。

テレビ出演の予定決めはもちろん、シングルCDの発売、ポスターなどの告知宣伝……。

先輩たちと話しているけれど、どれもピンとくるものがなくて。

もちろん、やれることはすべてやるけど“時の人”にならないようにするためにはどうしたらいいのか。

それを考える毎日だ。


悠はというと、この会社にあるレコード施設でレコーディングをしたり、CDのジャケット写真を撮ったりなど大忙し。

悠の魅力を最大限にレコーディングできるように、ボイストレーナーが専属でつくようになった。

もともと、悠は整った顔立ちをしているから、素顔を明かして売り出していこう、という方針に。

まあ、泣き叫ぶように歌う姿も悠の魅力の一つだったから、その姿を隠しては意味がない……、というのは坂本さんの意見。
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