Re:スタート
だけど、それは佳奈も一緒だ。


俺がどれだけ佳奈を大切に想っていたか。

俺がどれだけ佳奈に尽くしていたのか。

俺がどれだけ佳奈を支えてきたのか。


佳奈は考えたことあるのか?

考えたことなんてないんだろうな。

ないからこそ、あんな酷い別れ方ができるんだ。


佳奈と過ごしてきたこの部屋さえ、憎くて仕方ない。

思い出がたくさん詰まった部屋なんていらない。

だけど、写真立ても捨てることができなかった俺だ。

このアパートの部屋ごと解約して出ていく気分にもなれない。


どうしていいのか分からない俺は身動きもとれず、感情のままにテーブルにこぶしを打ちつけた。

手がジンジンする。



「くっそ……」



思い切り打ち付けた手に鈍い痛みを感じる。

だけど、心のほうがもっと痛かった。

俺の性格上、感情の処理は得意なはずなのにな。

だけど、今回だけはそれが、どうにもこうにもうまくできない。

こんなときこそ、嫌な出来事をあっさり忘れることができたらいいのに。


……人間の感情って、複雑に作られているもんだな。

自分自身、荒れているはずなのに、どこか冷静に物事を分析してしまう自分も嫌になる。
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