Re:スタート
佳奈にも感情にも振り回された俺は、部屋の隅に置かれたダブルサイズのベッドに腰掛ける。

今日は寝相の悪い佳奈がいないから、ゆっくり眠れる。


……これでいいんだ。


そう思って、ベッドに体を預けるが居心地が悪い。

ベッドは今までと変わらないのに、佳奈が隣にいないだけで、どこか知らない空間にいるようだ。


……いつもだったら。

歌手という夢を叶えるために、作曲をしている時間だ。

職場から帰宅した後に夕飯やお風呂を済ませ、歌作りを始めりていた俺。

歌を作り始めることができるのは日付けが変わるころだった。

ベッドの端に腰かけ歌詞を考えている俺の横で、うとうとしはじめる佳奈。

そんな佳奈に聴かせるかのように、口ずさむ俺の歌。

佳奈は俺の歌を子守歌かなにかだと思っているのか、しばらくするとベッドの上で横になり、すやすやと寝ている。


そんな佳奈が愛しかった。

眠った佳奈の頭を撫でることが俺の日課で、1日の疲れを吹っ飛ばすような癒しの時間だった。


だけど。

今、ここに佳奈はいない。

歌を聴いてくれる佳奈も、無防備に眠る佳奈も、頭を撫でさせてくれる佳奈もいない。
< 17 / 224 >

この作品をシェア

pagetop