Re:スタート
私は熊山さんの言葉を遮るように言った。

悠も私の言葉に頷いている。

このライブハウスをこのままにしておいたら人は入らないかもしれない。

だけど、やれるところまでやれば、絶対に盛り上がるライブハウスになる。



「音楽は魔法なんですよ。ライブハウスは魔法の世界だって、私、小さな女の子に教えてもらいました」



私が日雇いバイトをしたとき。

整理券を渡した女の子が言っていた。

魔法の世界に連れてきてもらったんだ、って。

音楽は魔法。

ライブハウスはそんな魔法をかけることが出来る場所。



「このライブハウスも魔法の世界ですから。明日、思いきり魔法をかけられるように準備していきましょう」



そう言って私は出入り口に走り寄り、重たいドアを開けた。



「このドアは、ライブが始めるギリギリまで開けておきましょう! ライブが始まる瞬間にドアを閉めて、それがライブ開始の合図でどうですかっ?」



我ながらいい考えだと思う。

日差しは入るし、ぎりぎりまでお客さんを呼び込める。

このドアの閉まる大きな音も演出に使えそうだ。

私は風の力などでドアが閉じないように試行錯誤する。
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