Re:スタート
「佳奈っ」



額に浮かぶ汗を手の甲で拭っていると、突然名前を呼ばれて驚いた。

びっくりして振り返れば、悠が息を切らして立っていた。


走ってきたのだろうか?

というより、リハーサルは?

そんな私の感情を読み取ったのか悠は、



「リハーサル、終わったよ!」



と、満面の笑顔を見せてくれた。



「お疲れ様。……リハーサル終わったなら、ビジネスホテルで先に休んでいていいのに」



私がそういうと悠は首を横に振った。



「ううん。佳奈と一緒にいたいから。……それに、佳奈だけ残して休めない」

「……悠」

「チケット、残り何枚? 一緒に配っちゃおう」



悠は私が持っていたチケットの半分を取った。

悠の頼もしさに嬉しくなって、でもそれ以上に、悠と一緒に過ごせることが嬉しかった。

……リハーサル終わりで疲れているはずなのに、私のところに走ってきてくれてありがとう。

私は今すぐ悠に抱きつきたい衝動を抑えながら、悠と一緒に残りのチケットも配り終えた。
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