Re:スタート
結局、俺はその日眠ることができなかった。

時間が経つにつれ、状況を理解してくる。

もう、俺の隣には佳奈がいない。



「はあ……」



そんな現実を感じるたびにため息がこぼれる。

ベッドに腰掛け、動けない俺の手には携帯が握られている。

画面が光ることも、着信音が鳴ることも携帯。

そんな携帯の画面をぼーっと見つめては、佳奈からの連絡を待っていた。


だけど、連絡なんてくるわけがないよな。

新しい彼氏のもとにいるんだろうから。


そんなことを考えながら、俺は佳奈とのトーク画面を見つめる。

よく見れば、佳奈から送られているトークの数のほうが圧倒的に多いことに気が付く。



『今日の夕飯はなにがいい?』

『お風呂は湯船に入る?』

『何時ごろ帰ってこれそう?』



俺を気遣うような佳奈からのメッセージに、返信すらしていなかった。

これは佳奈の気持ちを無視している、と言われても仕方ないよな。

多分、このトーク画面を見た人、全員がそう言うと思う。

もっと、メッセージを返せばよかった。
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