Re:スタート
大成功で幕を収めたライブ終了後。

俺は余韻に浸りたくてステージの上にギターを手にしたままたたずんでいる。

そんな俺の横に佳奈が駆け寄ってきた。



「悠っ。お疲れ様! 私、感動して泣いちゃったよ」



そういう佳奈を見れば、目を少し赤くしているようだった。

俺の曲を聞いて泣いてくれたのか。

そう思うと嬉しかった。

何度だって、想いを届けることが出来るんだ……って。



「それだけ伝えに来たの。じゃあ、私、戻るね」



そう言って引き返そうとする佳奈の腕を俺は掴んだ。

薄暗いステージと観客席。

ステージの上には俺と佳奈だけしかいない。

観客席にも誰もいない。

この空間には佳奈と俺、二人だけ。



「佳奈に伝えたいことがあるんだ」

「え……?」

「聞いてほしいんだ。ステージから一番近い、真正面の客席で」



戸惑う佳奈に俺は微笑んで、頭を撫でる。

どうしても今日、伝えたいんだ。


俺の勢いに負けたのか、佳奈は頷く。
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