Re:スタート
それは夜の締め作業の出来事だった。

ホールから大きな声と共にキッチンへ向かってくる足音が聞こえた。



「ねぇっ。レジ金が合わないんだけど⁉ あんた、盗んだよね⁉」



そう言って私に詰め寄ってきたのは、山本先輩だった。


……レジ金が合わない?

なんのことだかさっぱり分からなくて、首をかしげる私。

キッチンの台にバンッと思い切り手をつく彼女。



「あんた、さっきレジの前にいたよね⁉」

「えっと、レジの近くは通りましたけど……」



それはホールの先輩に呼ばれたからだ。

『キッチンの作業が終わったら、トイレ掃除もやっておいてよね』と言われた。

先輩の近くに行くときにレジの近くを通ったのは間違いないけど……。



「私がトイレから戻ってきたとき、あんたがレジの前でごそごそしてたの見たんだよね。まさか、レジ金盗むと思わなかったから、声かけなかったけど!」

「ええっ。レジ金を盗む⁉」

「3万、なくなってるのよ! あんたの財布見せなさいよ!」



なにごと? というように、他の作業をしていた先輩たちが集まってくる。

山本先輩の主張に私へ向けられる批難の目。

そんな出来事に泣きそうになりながらも、無実を証明したくて私はロッカーのカバンの中に入っている財布を山本先輩の前に持っていく。

奪われるように中身を確認される。
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