Re:スタート
「ちょっと! やっぱり、あんたじゃない!」

「え?」

「3万円、あんたの財布の中にしっかり入っているんだけど⁉」

「そんなはずは……っ!」



今月は生活費がピンチだったから、お財布には千円札数枚しか入れていなかった。

自分の財布の中身を見せつけられれば、そこには見覚えのない3万円が入っていた。


ハメられた……。


そう思っていると、店長がやってきた。



「なにごと?」

「この子がレジ金を盗んだんです!」



違う! と、横に首を振っても、誰も信じてくれない。

店長は山本先輩から事情を聴きだしている。

でも、店長だけはせめて味方になってほしい……。

そう、心の中で祈っていると。



「ちょっと、キッチン奥で話をしようか」

「……え、」



そう言って店長はキッチンの奥へ入っていった。

私もあわてて後を追うけど、恐怖で足が震えている。


キッチンの奥へ着くと、店長は静かに話を切り出した。



「君が盗んだっていう確実な証拠はない」

「やっていません……っ」

「君はそういうけど、やっていない、という証拠もない」



店長の顔を見れば、悲しそうな表情をしていた。

私は店長に無実証明したくて口を開こうとした瞬間、言葉を遮られた。
< 29 / 224 >

この作品をシェア

pagetop