Re:スタート
公園のベンチにはアコースティックギターを弾きながら歌を口ずさむ男性。

20代前半くらいの男性だと思う。

暗いから顔立ちとかはよく分からなかったけれど、彼のまとう雰囲気は美しかった。


彼の座っているベンチから少し離れたところで立ち止まり、耳をすませる私。

彼の歌声、歌詞がはっきりと聴こえる。

優しくて、どこか切ない歌。

全身が包み込まれるかのような、温かい感情でいっぱいになった。


気づけば涙がこぼれていた。

苦しんでいた日々を溶かしてくれるかのような彼の歌に、私は涙を止めることができなかった。



「ひ、っく……、」



立っていることもできず、私は泣き声をあげてその場にしゃがみこんだ。

歌声が止まったことにも気づかず、泣き続ける私。

手の甲で涙を拭っていると、差し出されたのは1枚のハンカチ。



「どうしたの? よかったらこれ使って」



涙で濡れた顔をあげれば、ハンカチを差し出す男性。

先ほどまで歌っていた彼が、私の目の前にしゃがむ。

涙でぼやける視界の中、よく見ればベンチにはギターが置かれている。


わざわざハンカチを渡しに来てくれたの……?
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