Re:スタート
午前9時から午後6時まで、正社員として工場で働いていた俺。

だけど、佳奈と一緒に暮らすために今以上にお金が必要だ。

”仕事”ということに対してトラウマを抱えてしまった佳奈。

初めて会った時より少しは精神的に安定してきたとはいえ、働くことに恐怖を持っている佳奈に『働け』なんて言えない。

それでも佳奈は仕事を探そうと求人雑誌を見ようとするが、雑誌を持つ手が震えているのが分かる。

そんな状態で働かせたくない。



「佳奈。仕事、無理して探そうとしなくていいよ」

「え?」

「佳奈は身の回りの出来ることから少しずつやって、ゆっくり仕事と向き合っていけばいいからね」



ソファに座ったまま、固まって目を見開く佳奈の頭に手を置く。


安心して。

俺が佳奈の分まで頑張るから。

佳奈は、仕事が終わって帰ってくる俺を笑顔で出迎えてくれるだけでいいから……。



「でも……。私も働かないと生活が、」

「佳奈はそんなこと気にしなくていいから。今は貯金だってあるし」



曖昧に頷く佳奈はきっと俺の嘘を見抜いている。
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