Re:スタート
「おーい。手が止まってるぞ」

「先輩」

「なんだよ?」

「好きな人の居場所が分からないけど会いに行きたいときって、先輩だったらどうしますか?」



もう、自分の考えだけじゃ分からなかった。

俺は皿洗いの手を止めたまま、先輩の目をじっと見る。

先輩はにかっと笑って言った。



「有名になるしかねぇな」

「……は?」



想像のはるか斜め上を超えてきた先輩の言葉に、思わず『は?』なんて言ってしまう。

ぽかん、と口を開ける俺に先輩は組んでいた腕をほどいた。



「佳奈ちゃんが応援してきたのは、お前の夢だろ? だったら、さっさと歌手で有名になって堂々と迎えに行けよ」

「……だから、佳奈の居場所が分からないんですって」

「ほら。有名になれば色んな繋がりができるかもしれねぇだろ? そういうのを利用したりしてさ、居場所を探すとか?」



それはもうストーカーの域に達していますよ……。


呆れて何度目かのため息をつく俺は、皿洗いを始めた。

シンクの中でガシャガシャと食器がぶつかる音がする。

そんな俺に先輩の視線が刺さっているのが分かる。
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