Re:スタート
『まあまあ。その合コンに来てくれる女の子さぁ、音楽関係の仕事しててさ、』

「えっ、」



“音楽関係”という言葉に思わず反応してしまう。

そんな俺の反応はお見通しだったのか、電話越しで先輩がにやにや笑っていることが分かる。



『オーディションとかも手掛けているんだってよ。話聞きに来いよ』



……オーディション。

そんなこと、考えたこともなかった。

俺はどうやって有名になるのか、どうやったらデビューできるのか考えてはいたけれど、具体的な道は考えていなかった。

努力し続ければ実る、とか、正直そんな甘い考えしかもっていなかった。



「先輩」

『なんだ。参加する気になったか?』

「ありがとうございます! スッキリしました! でも、合コンは不参加で!」

『え、あ、おいっ!』



先輩の言葉を最後まで聞かないまま、俺は電話を切った。


そうか。

オーディションに参加すればいいんだ。

今の俺の実力も知ることができる。


俺は出しっぱなしだったギターをケースにしまい、携帯の画面を開く。

ネットで検索するキーワードは“歌手 オーディション”だった。
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