Re:スタート
「佳奈……」



俺はそっと写真立てを手に取る。

写真には頬を寄せ合い、幸せそうに笑う佳奈と俺の姿があった。

佳奈と出会った公園で撮った写真だ。

この写真は、俺の仕事が休みの日のお昼時に撮った。


俺はギターを持って、佳奈と公園に行った。

あのベンチに座り、ギターを弾き歌う俺。

佳奈は俺の隣で微笑みながら聞いてくれた。

弾き歌い終えると、佳奈は毎回拍手してくれる。



『私、悠の歌が好きっ』



そう言って笑った佳奈。

照れてしまった俺は、そっぽ向いてしまった。

変に思われただろうか。

嫌な態度をとったように見えただろうか。

あとからそう思って、恐る恐る佳奈に目を向けると、佳奈は鞄からズボンのポケットから携帯を取り出していた。



『悠っ。写真撮ろう!』



そう言って佳奈は携帯のインカメラを起動して、手を伸ばし携帯をかざす。

画面に映る佳奈と俺の姿。

佳奈は楽しそうに笑っているけど、反対に俺は緊張気味の表情。

彼女と写真撮ることとか、佳奈以外になかったし……。

それに突然カメラを向けられたら、どんな表情をしていいのか分からない。


引きつる笑顔の俺に佳奈が言う。
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